「好きな人は、いたでしょ?」
「ふっ。どうした?今日はやけに聞いてくるねー。佐野もしかして、俺のこと好きになっちゃった?」
生き生きした瞳で、彼女の方を振り向く。
「はぁ?何でそうなるの?普通に聞いただけだし」
「そっか、あれか。まだ気になってるって段階だな。そうかそうか」
「勝手に解釈するな!」
「おっと」
パンチを長澤の腕に食らわそうとして見事スカされた。
いたずらっこの子供のような屈託ない笑顔は、茶髪には何だか不釣合いだけど、嘘のない笑顔だということはっきり分かる。
憎むに憎めないその天真爛漫さは、返って羨ましいほど。
気がついたら、今朝の苛立ちさえも和らいでいた。