「………ゆづ?」
そっと覗いた戸の向こうに見えたのは、しゃがみこんでいる制服姿のままの優月だった。
ほっとしたものの、すぐさま気を取り直し部屋へ入る。
「ゆづ、居るなら返事しろよなー。そんなとこで何してっ………」
近寄った彼女の手には、相園家の古いアルバムが開かれていた。
ドキ……ンッ
深く強めに陸の心臓が鳴る。
反射的に、どこからか冷や汗も感じる。
「ごめん、勝手に見ちゃって……」
「いや、別に構わないけど」
なかなか陸の方を向かない彼女の視線の先は、幼い頃優月一家と陸一家で行った、初詣の時の写真。
覚えている……。
この年に、優月は引っ越していき、最後になってしまった写真は、その下、家の前で陸が優月をおんぶし大口開けて二人で笑っている写真だ。
それはどこかに行ったとか何かあった訳でもない、ごく普通の日常の中の瞬間だった。