一口コーヒーを飲むと、やたらと柔らかい暖かさに陸は胸が熱くなった。
それは単に淹れたてのコーヒーだったからではないと、ちゃんと理解していた。
これまで不安気な色を誤魔化しながら背負っていたが、その帰りには陸の目に確かな強い覚悟が宿っていた。
もう何が待っていても逃げない、真実を見つめる自信が、彼の中でしっかり芽生えていた。
その頃、相園家の一室で優月は一人、目を見開き硬直していた。
呼吸もままならない程に。
彼女の視線の先は、一度躊躇してそれっきり開くことはなかった、アルバムのあるページ。
窓から差す斜陽は、優月の気づかない中であまりにも穏やかに部屋を照らし、それは魔法の世界で時を巻き戻していくかのようだった。