ついでに力加減も麻痺させてしまったのか、優月は仁科の強めのハグに苦しんだ。
「……うう、せ、先輩ぐるじいですぅ」
「ありがとう、本当にありがとう!ゆづこぉぉぉ」
探し始めて1時間は経とうとしていたこともあってか、感動も達成感もひとしおなのだろう。
でも、彼女が熱心に探すのには大きな理由があったのだった。
歓喜のハグから解放されたあと、仁科がほっとしたような顔でポーチを眺める姿を見て、優月は思わず聞いていた。
「見つかってよかったですね。で、みき先輩、そのポーチ、何か思い入れがあるんですか?必死でしたけど」
「うん。大事な思い出がね」
そう言う彼女の瞳は涙ぐんでいるせいだけではなく、懐かしい人と会ったかのように、宝物を見つめるように、キラキラ輝いて見えた。