段ボール箱の中は、端切れだけが沢山入っていて、他のものが入っている気配はない。
それでも一応念のため、端切れを全部出してみることに。
「……やっぱ無いかなぁ。ほんっとどこやっちゃ」
「あっ!」
取り出す端切れの山の中で、明らかにそれと違う、布一枚ではなくはっきり形あるものに優月の手が触れる。
「どうした、ゆづこ!」
時が止まったかのように、優月はピタッと動きが止まり、そしてゆっくり手を引き出す。
「……これは、もしかしてみき先輩の」
優月が持ち上げたものは、キャラメル型のポーチだった。
一瞬きょとんとする仁科だったが、すかさず優月に詰め寄り、ポーチを手に取りまじまじ眺める。
「これっ!!……そうだよ、これだよこれ!ありがと~う、ゆづこ!大好きぃ!」
惜しみない抱擁で喜びを露わにする仁科。
もはや涙ぐんですらいる程だ。