瞬が泣く姿を見たのは、優月はこの日が初めてだった。
初めて顔を合わせた時以上に、戸惑っている。
人懐っこく、世話をほとんどかけない、いい子の印象しかないのだ。
そんな彼の身に何があったのか……。
あの僅かな光景と、陸の一言を思い返す度、かなり深刻なことのように思えてきて、自分がこのまま立ち入っていいのかどうかまで思考が巡った。
相園家に居候をしている自分。
迎え入れてくれた、親戚。
確かな事実。
まだ来て1年も経っていないのに、家族の一員だなんて自惚れ過ぎている気がして、鼻の奥がツンと冷たく痛んだ。
それでも、瞬の泣く姿の方が何倍も何倍も胸が痛くて苦しかった。
寝ころびながら、涙で滲んだ視界に映ったのは、机の上に置いた編みかけの瞬の帽子だった。