隣の和室の襖をそっと開ける。
一瞬にして開けたことを後悔するなんて、思いも知らず……。
「陸っ……、ただ、いま」
目に飛び込んできたのは、瞬を抱っこし、嗚咽を漏らしながら泣く彼の背中を、陸が優しくさすっている光景だった。
「……ゆづか、おかえり」
ゆっくり顔を上げ、そう返すも顔に覇気がなく、やっと声を出しているのではないかという程、くぐもって掠れていた。
今何が起きているのか、はっきり分からなかったが、冗談が言える状況ではないことは容易に分かった。
次に続ける言葉に迷っていると、陸が先に言ってくれた。
「悪い……。今、瞬と二人にしてくれるか?ごめんな」
「…うん、わかった」
手に力が上手く入らないまま、襖をぎこちなく閉めた。
自室に戻ると制服のまま、ぼーっとしながらバタッとベッドに倒れこむ。