「静かにっ!」


「はい………」


わかりやすく肩をすぼめる。


「よし、わかった。とりあえずここは俺がもう一度注文受け直しに行くから。今度からはすぐ近くにいるスタッフにも声かけてね。全部一人で受けなきゃって思わなくて大丈夫だから。まだ遠慮しちゃうとこあるかもしれないけど、どんどん周り頼って。洋平さん特に一見怖そうだけど、すげぇ涙もろいとこあるし。大丈夫大丈夫」



「ん?何か言ったか、ぞの君よ。君達なんだ?早くさっさと動け」


カウンターに出来上がったばかりの料理を置くと、背高のっぽの強面“洋平さん”本人が鋭く反応し、陸達に喝を入れる。



「いいえ、すぐ戻りまーす。河野さん、代わりに洗い場頼むね。あ、あと、その顔もちゃんと洗ったほうがいいかもね」


「はいっ!」



颯爽とメモ用紙とペンを持つと陸はフロアへ入っていった。


そんな彼を尊敬の眼差しで見つめる彼女の目は大分腫れていた。

洋平のドスの利いた「おい」の声で我に返ると、大慌てで洗い場に移ったのだった。