乾燥して冷えた今の冬の風は無機質なようで、夏と比べたらどこか清々しくもあった。
辿り着いた中庭のベンチ。
そこには誰も居なかった。
何となくそんな気がしていた陸は、ほっとしたような溜息のような、曖昧な白い息をふわっと吐いた。
ベンチに腰掛け、冴えわたる真っ青な空を仰ぎ見る。
周りがうっとおしく気が付いたら、ここに来るようになっていた。
一人で過ごすのに何とも最適な居場所だった。
それがいつしか自分だけではなく、“彼女”もここを必要とする場所になっていた。
だから気が付けば、いつもここに来れば彼女がいるものだと思うようになっていた。
いずれは来なくなる日が来る。
そんなことは分かっていたはずだ。
ただ、以前の一人きりの中庭のベンチに戻っただけ。
それだけなのに、何だか彼は無性に空っぽな気分だった。