彼が去った後、乾いたはずの涙が再び彼女の頬を伝っていた。
(言っちゃった……。これでよかったんだよ、私には相園君に感謝しかない)
「……ぐすっ。相園君のせいだもん。みんな、みんな…」
(好きになっちゃったのも、全部そう……)
押し殺して泣く息が、昼下がりの空に白く舞って消えていった。
貰ったカイロが手のひらをじんわり暖め、その手の甲には涙が落ちた。
もう一つ封印していた気持ちは、決していい結果を生まないと最初から分かっていた。
それでも彼と過ごしてきた、休み時間、放課後の中庭のベンチは、彼女の宝物の時間で、幸福に満ち溢れていたのだった。
それだけで十分過ぎるほど幸せだった。