今の話で先ほどの彼女らの会話の意味を陸は理解した。



「腹いせにしても、随分幼稚な態度だなそれって」


苛立ちは消えず、そう言葉を吐き捨てた。





彼女はハンカチで涙を抑えると、言葉を続ける。


「何でそんなに我慢してまで嫌われてる人と一緒にいるかって、思ってるんだよね。…そこが一番気になってるんだよね。……誰にも言わないでおこうって思ってたんだけど、もうこの際だから話そうかな」



思い切った宣言は、頑なにひび一つ入らない、あの氷の塊が解け始める瞬間そのものだった。






「私ね、小中っていじめられてたの。学校も休むこともできないくらい脅迫されてて。今だからこそ言えるけど、何度も、死にたいって思った。でも実際そんな勇気もなくて。高校こそは絶対変わってやるって思って、知ってる人が誰もいない遠い学校を選んだ。でも、一人で過ごすことが本当に恐怖で、新しい友達作るにもどうしていいかわからなくて。そんな時、一番最初に声をかけてくれたのが聡美だったの。本当に嬉しかった。嬉しくて、変に必死になってた。嫌われないように、話合わせて。自分でも、おかしいなって思ってたよ。でも、もうあの頃みたいにはなりたくなくて。……ずっとましだから、あの頃と比べたら今の方がずっとまし」