ベンチに腰掛ける彼女の後ろ姿はどこか儚げで、冬枯れの景色の中に同化してしまいそうに見えた。
陸は見つけた瞬間こそ躊躇ったが、景色に消えかけそうな錯覚に慌てて声をかけた。
「小柳!」
陸の声にびくっと驚いた彼女はすぐに彼の方には向かず、何やらハンカチを持ちながらあたふたしている。
「ひょっとしてサボりか?にしてもこんなとこじゃさすがに寒いだ、ろっ…」
歩み寄ると、目が腫れて赤くなっていることに気づき、言葉に詰まった。
「…へへ、バレちゃったー。でも相園君ならいいかな。黙っててくれるでしょ?」
心なしか鼻声だ。
気まずさを抱えながら隣に腰かける。
「それは、どうかな」
「え~、たまにいじわるだよね。学級委員さんだからそういうの厳しいのか。ふふ」
やっと彼女は目を合わせたものの、すぐ前に向き直り、マフラーを口元まですっぽり覆い白い息をふうっと吐いた。