「そっか…。でも、ケンカしてないんだな。よかったじゃん」


「ん?そう、だね」


ほっとしたような安堵の色を覗かせる彼に不思議に思った。


まるでそれが自分の事のよう安心しているようで…。



何か訳を聞きだそうとしたとこで、彼は降車ボタンを押していた。



「じゃ、また明日な!ゆづちゃん」


「は、キモ」


「おーこわっ!出た出た腹黒ちゃん」


「うるさい、早く帰ってください」


「ははは、じゃあなー!」



その元気なノリは嵐が過ぎ去ったかのようで、彼が降りた後で静かに息を吐いた。

そのお陰か、比較的学校出た時よりも大分気持ちも軽くなっていた。



「やっぱりすごいわ…。あいつ」



ぼそっとそう呟くと、ふと思い出す無邪気な笑みとはニュアンスの異なる、長澤の朗らかな安堵の笑み。