けれど、いとも簡単に納得できたのは、まだ平凡な生活の証拠だったのかもしれない。
お互いに。
辞めた理由を追求してこない彼女に、また陸自身も酷く安堵していたのだから。
「もう少し、ここにいていい?」
「いいよ」
そう二人の会話を最後にしてから30分近く過ぎ、小さな寝息が聞こえた始めた。
陸が後ろを振り返ると、優月が文庫本を中途半端に手で開いたまま、かくっと頭を下げて眠っていた。
「はぁ…。寝ちゃったのか」
うぅ~っと頭を悩ませ、くしゃっと髪をいじる。
(しゃあねーな…)
陸はゆっくり椅子から立ち上がると、ためらいがちにそっと優月を横抱きにして、自分のベッドに横たわらせた。