「ん!」
ばっと右手を陸の方に出す優月。
「何?」
「陸のおすすめの本、貸して」
半分苛つきながらも、自分のいちいち反応してしまう、敏感な心を取り繕うのに必死だった。
本棚から取り出した文庫本をポンと優月に渡す陸。
もう小馬鹿にすることは言ってこなかった。
渡されたのは直木賞作家、ということだけは普段全く小説を読まない優月にも分かるほど、よく名の知れた作家の本。
正直言って、薦められても気乗りしない彼女。
それでもこの場をもたせる手段には最適だった。
陸の本棚には沢山の小説が敷き詰められている。
まるで小さくした図書館のよう。
優月の本棚は漫画本だらけで、全くもって対称的だ。