ちらりと陸を見ると、彼は資料に目を向けていた。



「……私も眠れなくて」


「ふーん。で、わざわざ俺んとこ来たの?」



ちょっとトゲのある言い方にむむっとなる優月だが、どこか聞き覚えのある台詞にハッとする。


「来ちゃ、ダメだった?」



そう、昼間の二人の危うい空気間の会話だ。


「ふふっ。別に?」



『二人になりたかった』


あの言葉が蘇る。




でもまさか今度は自分が言うなんてできるはずもなく……。





「よしっ、じゃあ…何か本読んでやろうか?ゆづちゃんに」



彼の閃いた提案に一瞬きょとんとしたが、すぐに噴き出していた。



「ははっ、ええ?私子供じゃないんだけど」


「まだまだお子ちゃまだろ~?よく忘れ物はするし、朝一人じゃ起きれねーし」


「う、うるさいなぁ~。しょうがいないじゃん…、ほんっとに陸はいちいち細かいよね」



痛いとこをつかれ拗ねるも、相変わらず陸の方は余裕めいて穏やかに笑うばかりだった。