時折彼女がそういうあやふやな態度になることを彼は知っている。
言いたい事があるくせに、言葉にはなかなかしない。
察しろと訴えているつもりもないだろうけれど。
そんな時、決まって彼は放っておく事などできなくなる。
幼い頃からの二人の意思疎通は揺らがない。
「…とりあえず、中入れよ。冷えるし」
部屋の中へと促す陸。
相変わらず治まらない鼓動を引き連れたまま、優月は足を踏み入れ、部屋のドアをゆっくり閉めた。
古びた石油ストーブが部屋の中を穏やかに暖めていた。
その暖かさに緊張が少しずつ和らぐ。
「陸も、まだ起きてたんだ?」
「ああ。まだ眠れねぇから、資料見てた。自動車学校の。来週から通うと思って」
椅子に座った陸が、彼女にパンフレットをひらっと見せる。