とっさに取ったその行動は、多分複雑な心境を誤魔化すのに一番手早かったのだろう。
『親子』それを素直に喜んでいいのか、それに好奇な目で見られている状況。
でもそれは本当の母の存在に向けられるもの。
自分は偽りの存在。そう見られるだけ。見せかけ。
親子ではない、その事実が彼女の胸を突き刺していく。
静かに深く、ただ刻みこまれていく。
あの会話が耳に入ってこなければ、例え聞いてしまってもただの世間話の一つ、そう捉えれば深刻な痛みを感じることもなかったのかもしれない。
そして、じわじわ引きずることも。
買い物に行っていた陸とおじいちゃんが戻り合流すると、母親達の視線が一気に彼らに集中する、気がした。
陸に飛びつき、服を引っ張り色が変わる場所へ誘い込む瞬。
「ここ~、しゅごいの!へへへ」
「はは、本当だ。瞬気に入ったんだな」