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やがて星達が朝の気配に気づき、姿を消していく中、月はやはり焦ることなく、ゆっくりとまだ地球を見下ろしていた。
そしていよいよ、空の漆黒の色が薄くなり、桔梗色に変わる頃……、
夜の窓を閉じるその少し前……、
月は誰も知らない遠い物語を、そっと口ずさんだ。
そう、光の声を繋いだ物語を。
歌うその声が月だとは誰も気づく者はいない。
だって、誰一人月の声を聞いたことがないのだから。
月だけしか知らない物語。
終わることのない物語。
今夜もきっと、沢山の声が届くのだろう。
そして話を紡いでいくのだろう。
地球から届く光の声が聞こえなくなるその日まで。
夜の窓が開く時、月はそこにただ在り続けていく。