「ゆづちゃん、次何作るか迷ってるの?さっきから悩んでるみたいだけど」



手芸の雑誌を数冊広げながら、難しそうな顔をしている優月に声を掛けたのは、2年の久米田 奈々(くめた なな)。

優月の隣の椅子に腰掛け、一緒に雑誌を覗く。


彼女からほのかに可憐で上品そうな花の香水が香った。




「あ、はい。えっと、クリスマスプレゼントに家族みんなに何か編もうかなって思ってるんですけど…」


「家族にあげるんだー?いいじゃん!…じゃあ、みんな同じ物っていうより、一人一人にあったものがいいかもね。例えば…、これとかもいいんじゃない?」


久米田が指で示したのは靴下のページ。




「靴下…、そういえばまだ一度も編んだことないです。あ、じ-ちゃん靴下欲しいって言ってたっけ…」


「お?一人決まった?」


「はい!あやうく今日も帰るまで決まらないとこでしたー」