「何で?…何で、相園君はそんなに私のこと気にかけてくれるの?可哀想だって、思ってるから?」


「そういうんじゃねぇよ。同じクラスだったのに、最初名前しか知らなくて。でも、小柳の話聞いてくうちに、すげぇ面白い奴なんだなって思った。本当のお前の姿知らねぇのに、他の奴にずっと誤解されたままなのは、嫌だから…」


そう言うと、陸はレモンウォーターを全部飲み干した。



「……それだけ?」


「え?」


消え入りそうなか細い声に振り向くと、彼女のいつもどこか冷たい氷を思わせる瞳が、微かに潤んだ。


「ううん。はぁ~そっか。ありがとう。相園君て本当に世話焼きで優しいなぁ。なんか、お父さんみたい」


「ぅえ?」



呑気そうにそうぼやく彼女に対し、言い当てられた言葉にドキリと、一瞬にして陸の鼓動は跳ね上がる。

どぎまぎしている陸の傍らで、小柳は底にたまったコーンを手でトントン叩きながらコーンポタージュを飲み干した。


「…ゴクッ。……私ね、相園君に話聞いてもらえるだけですごく嬉しい。本当の自分を知ってくれてる人が一人でもいるなら、それだけでいい」