図書館での出来事を長澤は心底後悔していた。
抑えが利かなくなった焦り。
彼女に怯えるような、今にも泣き出しそうな顔をさせてしまったのは、紛れもない自分。
そんな顔させるつもりじゃなかったのに、彼女の素直な気持ちをただ知りたかっただけ。
一方でその気持ちはどこにあるのか、どんどん行方を眩ます彼女。
長澤はその在り処にやっと気づいた。
けれど、散らかった机の上をとっさに広げるように、すぐに心の隅っこに追いやってしまった。
その在り処は言葉にすればわりと近く、でも感覚でいえば永遠に遠いような場所。
その場所へ進むなんてもってのほか、進もうとすればするほど、逆にその場所は遠くなるのだ。
まるで誰も近寄らせないように。
気づいてしまったからにはもう遅く、自分の中からは消えない。
そんな簡単に心は都合よくできていない。