「……そ、か。てことは、正式に、ニセカップル終了だな」


「…うん」


「じゃあ、もうさ、名前も元に戻そう。前みたいに。ね、さーのちゃん」





夕陽に照れされ、より髪が明るくヤンチャそうに見える、その髪の持ち主はどこか晴れ晴れしたように朗らかに笑った。



バス停に向かうまでの帰り道、里乃と後藤と別れ二人きりになって数分後、優月は長澤にあの日の返事をした。




「……」


「やっぱさ、佐野ちゃんのほうがしっくりくるし。俺はね、全然全然、光って呼んでくれていいんだけどっ」


「ふふ、じゃあ…、長澤で」


「あ、ふーん。いいんだけどね、全然いいんだけどさ」



拗ねた子供のようにぷいっとそっぽを向く。

でもそんな強がりも、いつもの彼なりの気遣い。


気まずい空気には決してさせない。



でも今回気遣ったのは、他でもない、単に彼女の悲しい顔を見たくなかったからだった。