「もしかして…、妬いてた?」
「なっ!」
「あーだからか」
「いや、その~、あの…」
「やけに冷たかったもんなぁ。なるほど、ようやく分かった」
腕を組み、こくこくと頷きながら一人で解決しはじめる陸。
「だから、冷たくしてたのは、妹扱いしてくる陸にムカついてたからだよ。彼氏できたこととかやたら嬉しそうだったし」
もうあの告白以上に恥ずかしいことなどない優月は、正直に弁明した。
「…そっか。よかった。もしかしたら、ゆづに嫌われてんのかなって、思ってたから」
お互いに勘違いしてできた隔てる壁を、実は砂でできていたかのように、優しい風が少しずつ崩していく。
ふわりと舞い込むその優しい風は、言葉が続かなくなっても心地がよかった。
隣り合って肩が触れた、あの電車の中での音と揺れ、そして体温が、二人を何もかも許されたような気にさせた。
すれ違いも勘違いも、嘘も、離れていた長い長い月日も越えて。