誰にも邪魔できない思いがそこにあった。
電車を降りるまでの、家に帰るまでの、無垢なドキドキ。
けれど、ずっと、ずっと、その鼓動が二人から消えることはもうないはずだ。
互いの思いを知ったその時から、すでに永遠を約束するように。
だが同時に、誰も開けることのできない、複雑難解な扉を作ることも意味していた。
一人一人抱え、隠しこんでいた心の奥の扉とは別に。
それは、純粋に無邪気に思い合うがゆえのことだった。
もちろん開けることのできる鍵は、二人しか持つことはない。
誰も知らない、二人だけが知る心の奥にある扉は、いつだって静かだったが、その中で灯る明かりは消えなかった。
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あれから心配症な陸とおばあちゃんに諭され、充分過ぎる程眠り、そのせいで逆に頭が重たくなった優月は、目を覚ましゆっくり体を起こす。