彼もまた、自分から瞬の生まれた経緯を話そうとしなかった。
共に暮らすおばあちゃんおじいちゃんも同様に。
けれど、毎日近くで見る陸の育児パパっぷりに、経緯など知ることが、今はそんなに大事なことではない気がして、優月は何も聞かなかった。
今も…。
「ゆづ、ゆづ!聞こえてんのか?」
「え?何?」
「…はぁ。皿出してって言ったの」
「あ、お皿ね、はいはい」
「ゆづも料理覚えたほうがいいぞ」
「今は家事に男も女もないんだよ。それに、裁縫は私のほうが得意だし」
皿をテーブルに個数分並べると、えっへんと腕を組む優月。
「まーそれは認めるけど。料理できたほうが、モテるだろうけどなぁ」
「むっ。陸君はさぞかしモテまくりなんでしょうねー」
皿に生姜焼きを乗せる陸を、じろりと睨む。