俯いて膝の上で握りこぶしを作っていた優月は、隣にいる陸に向き直る。
「陸が好きだから。ずっと、好きだったから」
―――プシューッ
そう言い終えると電車が停車駅に着き、開いたドアから乗客が流れ込んだ。
すると、陸は優月の手を掴み、二人は乗り込む人の脇をすり抜けて駅に降りた。
ガタンゴトンガタンゴトン―――……
立ち尽くす二人の前で扉が閉まり、電車は再び発車した。
遠ざかる電車を見ながら、優月はまだ秋が始まったばかりの証拠の、不慣れな朝の寒さの中、恐る恐る小さく言葉を零す。
「降りちゃった…。陸?」
「びっくりして、つい…」
「ずっと、言わないでいたほうがいいのかもしれないって、考えたりもした。でももうこれ以上っ」
優月の言葉を遮るように、陸は彼女を胸に引き寄せた。
「俺も、同じ事思ってた。兄面するのも、自分の気持ち誤魔化すためでもあったんだ」
「…えっ、陸?」