かつてない程、言葉を噛み締めながら話す優月に、ドクンと陸の心臓は大きく跳ねた。




「噂を誤魔化すために、付き合うふりをしてたけど、本当はそれには別の意味もあったんだよ…。自分の気持ちも誤魔化せたらいいなって」


「ゆづの、気持ち?」


「ふりをしていれば、いつか本当に好きになるかもしれないって思ってたの。そうなれば、誤魔化す必要もなくなるし、ニセカップルじゃなくなる。そうなればいいなって…。



「じゃあ…、ゆづは長澤君を都合のいい奴にしてたのか?」


「そうだよ。酷いことしてた。だから、陸が謝ることなんてないんだよ」


説得するように語尾を強める優月。


「ゆづ…、俺が知りたいのは、どうしてそこまでして誤魔化そうとしたのかだよ」


「忘れたかったから…。でも忘れられなかった…」


陸は自分の逸る気持ちを抑え、彼女の言葉を待つ。

車内アナウンスが次の停車駅を告げる。



電車のブレーキが掛かり始めた時、優月はすっと息を吸った。