診察から風邪ではあったものの、念のため点滴を打った。
家族に病院に搬送された事態を連絡するため、持っていた携帯電話の自宅番号から相園家に連絡がいったのだった。
電話を受けた陸は、呆然としながらもすぐに切り替え、手短に仕度を済ませると、駅に全速力で向かっていた。
病院に着いてから陸は、ベッドの上で苦しそうに眠っている優月の側で目覚めるまで見守っていた。
翌日には優月の熱も平熱近くまで下がり、数日分の薬だけ処方してもらい、約束通り朝早くから来ていた陸と病院を出た。
『随分妹さん思いなのね』
と見送りに来た看護師に微笑まれながら言われた時、二人の間には気まずい空気が流れた。
苗字が違うことには気づいているはずなのに、そのことには何も触れずにそう言ったのだ。
だからその分、“訳あり”ということを主張しているようで、電車に乗り込んでもぎこちなさは引きずったままだった。