涙が落ち着き、嗚咽も出なくなった優月は、彼の予想外の言葉に目を丸くする。
「何で?」
「…笑うなよ?お前に彼氏ができたことに、焼きもち焼いてたんだ。ケーキまで作って祝ったのにな、バカみたいだろ?」
苦笑いを浮かべる彼とは打って変わって、優月はさっきと同様、目を丸くしたままだ。
優月の他に入院している患者がいない、しんと静まった病室に、二人の息遣いがやけに目立った。
「…う、嘘」
「嘘じゃねーよ。自分でもびっくりしてる。ゆづに彼氏できたことが、まじでショックだった。心のどっかでは、彼氏なんかできねーよなんて言っておきながら、できてほしくなかったんだよな…本当は。…はは、いつまでも兄面してんなって感じだろ?」
自嘲気味に心情を吐露し始める陸に、とっさに優月は今日のことを説明する。
「あ、あの今日はね、その彼氏…がね、突然用があるからって、先に帰っちゃってね、それで…その後私、道に迷っちゃってさぁ…」