怒るでもない、無愛想でもない、あの蔑んだような眼差しもどこにもない、もう何度も見てきた、でも随分久しぶりに見る、きりっとした瞳の目尻を垂れさせ微笑む陸が、今彼女の目の前にいる。



「………り、陸っ。…う、うう、ひっく」


その顔を見た途端、優月は涙が溢れた。


「お、おい、そんなに怖い夢だったのか?待て待て、目擦るな。今ティッシュを」



グッ



優月は立ち上がろうとした陸の腕を引っ張った。


「ん?どした?」


きょとんとし座り直した陸は、優月の手をそっと腕から離した。

嗚咽も構わず漏らし、泣きじゃくる彼女を胸に抱き寄せると、ベッドが軽く軋んだ。


「……ほんっとに、泣き虫だよな~ゆづは」


「う、うう、ひっく、うう…、怒ってないの?」




鼻声で聞き取りにくく、陸は耳を優月に近づける。


「んー。全くって訳じゃねーけど、それより…、すげー心配した」


「…ごめんなさい」