『…あれ、ここはどこだっけ?
私は何をしてたんだろう…。
ずっと寝てたのかな。
誰かを待っていたような気がする…』
白い靄が辺り一面覆いつくし、場所を曖昧にする。
自分が居る目的さえも。
それは、優月が以前に何度も見ていた夢の中の世界だった。
誰の声も音も聞こえてこない、孤独な冷えた空気だけが、刃のように刺さり体にまとわりつく。
心の片隅に残る、誰かが来てくれるという微かな期待だけを信じ、白い靄の中を彼女は歩き出す。
しばらくして見えてきたのは、ずっと昔に見たことのある景色。
懐かしい、青いお城。
『ああ、そっか。ここはお伽話の…』