玉砂利道の脇に、大きな桜の木があった。
五部咲き程度だろうか。
手を伸ばせばすぐ届く位置にある桜の花弁に指先で触れる。
すると、優月の目の前にびよーんと緑の幼虫がぶら下がった。
「ぎゃああああああああ!」
我を忘れ、転びそうになりながら慌てふためく。
「やだやだやだ、誰かぁ~!ううううっ」
しゃがみこんだ優月の肩をポンポンと叩く人。
「もう大丈夫だよ。やっつけたから」
そう落ち着いた男の人の声。
明らかに大人の声だけど、その一言ですぐにわかった。
「……陸?」
「相変わらずだなー、ゆづは」
顔を上げると、すっかり背丈も伸び、鼻筋も通り、きりっとした目つきに益々磨きかかった、大人びた陸がいた。