「ちゃんと帰る時は連絡するのよ、あまり遅くならないようにね。あら、マフラーしてないじゃない、ちょっと待ってて」


「分かってるって。すぐ連絡するから。ばーちゃんこそちゃんとメール見てよね」


玄関先で出かける優月を呼び止め、小走りでマフラーを持ってきたおばあちゃんは、丁寧に彼女にマフラーを巻く。



まだマフラーするほどでもない気候だが、心配性なおばあちゃんの言うことは素直に聞く優月。



「いってきます」


つぶらな瞳は、歳を重ねた分さらに小さくなった気がするおばあちゃん。

心配をしながらも笑顔で送り出してくれた。


優月はそんなおばあちゃんにチクリと胸が痛んだ。



また一つ、嘘をついたからだ。


駅へと急ぐ中、せっかく心配して巻いてくれたマフラーがやけに苦しかった。





優月は彼氏とデートに行くと言ったが、本当は一人で都内を出て千葉へ行く予定でいる。


そこは、今まで優月が暮らしていた場所だった。