新聞紙と殺虫スプレーを手に、陸は棚に近づき敵を待ち構える。


だが、これがなかなかすぐにクモは姿を現さず、退治するまで結局40分近くもかかってしまった。




「捕まえてくれないと寝れない」

なんて、駄々をこねる優月に陸が言うことを聞かないはずもない。


彼女のわがままであっても、それも大嫌いな虫から助けることは、小さい時からの決まりみたいなもの。



何時間かかろうが、絶対に拒むことはなかったし、必ず退治してきた。



でも…、今の陸が口をついて出た言葉は、反対のこと…。







「陸、ありがとう!ほんっっっとに助かったー」


つい昨日までトゲトゲした空気だったはずが、そんなこともすっかり忘れるほどの虫騒ぎで、優月は心深く陸に拝む。