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優月の大の天敵は虫だ。

這うのも飛ぶのはもちろん、アリやてんとう虫の小さいな虫だって嫌いだった。




彼女達の暮らす家は都内といえど、自然豊かで近所では田園風景やあぜ道が多く残る。

当然、虫もそれなりに共存しているのだ。



特に勢力の増す夏場は彼女にとって冷や冷やもの。

しかし、夏が終わっても侮るなかれ、安心は禁物。




あまり姿が見えなくなっても、完全にいなくなることはない。




いつだって神出鬼没なのだ。




寒くなってきたことをいいことに、彼女はそれを忘れていた。






「えっ…、何?今の?み、見間違いだよね?」


優月は読んでいた漫画を頭の上に持ち上げ、足はいつでもダッシュできる、スタンディングスタートの格好。


本棚の間に何か黒い物体がササッと入り込んだのを見てしまったのだ。