「ふふふ。楽しみだなー」


小柳は買ったばかりの本をわざとらしく、陸の前にちらつかせる。


「おい…、お前って結構いじわるだなー」


困った顔をしながらも、陸は意外な面に驚く。


「え?ふふ、ちょっと、相園君からかってみただけだよ」


そう言う小柳は得意げな顔をしながらも、どこか嬉しそう。


やられた感が否めない。

異性ならば、ドキッとしない訳がない程に、彼女はちょっとだけの甘い毒を無邪気に刺す。


陸も少なからず、脈が速くなっていた。




「ここにいる小柳が、本当の小柳だって、俺は思ってるけどな」


「……そう、思っててもいいんじゃない?でも、確かに相園君には何でも話せる気がする」


彼女は隣にいる陸の方を見ないままそう言ったため、どんな顔をしてそれを言ったのか分からないが、嘘は言っていないだろう。