小柳は少しずつ、陸に本心を見せるようになっていた。
それは会話の端々にも、表情にも感じられた。
そのことに陸は気づいていた。
そして、彼女の持つ独特の冷たさの理由も、知ることができたらと思っていた。
学校にいる時くらいは、自分の立場など忘れて、みんなが思う、ごく普通の男子高校生のままでいたかったのかもしれない。
誰かの力になれれば、自分の心の痛みも、気にしなくて済むと…。
冷たい風が吹き付けるようになってからも、あのベンチに陸と小柳は来ていた。
小柳は陸の分のひざ掛けも用意して。
「これ、この間言ってた本、買っちゃった」
「あー、新作出たんだよな。そっかー、小柳に先越されたな」
以前、二人の共通の好きな作家の話の時に、どっちが先に新作を買うか競い合っていたのだ。