食事を終え、名残惜しそうに店を出ると、老婦人は人懐っこそうな笑顔を見せながら、丁寧にお辞儀をした。
心が休まる、なんとも不思議なあったかさは、また次も訪れたくなるもの感じた。
「偶然見つけたけど、隠れ家っぽくて面白かったな」
「うん!店主さんも優しそうだったし、料理もおいしかったし、かわいい雑貨もあって、穴場かもね」
月明かりの下、店のことを思い出しながら話していると、携帯電話の振動に気づく。
(は、うっかりしてた…。連絡するの忘れてたっ)
7時前には帰ると言って出てきたのに、もう8時半だ。
特に心配症なおばあちゃんと陸のことが気にかかる。
自宅からの着信履歴は10件。
「あ、ここまでで大丈夫だから、送ってくれてありがとう、じゃっ」
「ちょっと待って」
手短に別れを言い、走り出そうとする優月の手を掴んだ長澤。