「あの、でももうお店閉めてしまうんですよね?」

看板にもPM5:00とある。

優月は腕時計で時間を確認すると、もう5時を回っている。


「ええ、通常はね。でもスペシャルナイトはね、特別に9時までやってるの。本当は常連さんだけを招待しているんだけど、あなた達がここを見つけてくれたのも何かの縁ね、ぜひ招待しますよ」


老婦人は上品に微笑む。


「優月、家が心配なら今日は…」


「大丈夫。遅くなるって連絡すれば…。まだ、帰りたい気分じゃないし」


「ん?」


語尾を濁す優月。

あまりにも小さな声だったのもあり、長澤は聞き取れなかった。


彼はきょとんと真ん丸い瞳を優月に向け、疑問符をちらつかせる。




「スペシャルナイトだって、何か面白そうじゃん。せっかく来たんだし、寄っていこう」


聞かれなかったことに胸をなで下ろし、優月はまだ不思議そうな彼の腕を引っ張って店内に入った。