「大人になった証にな、ちょっと苦くした。…苦すぎたか?」


「…甘いのがよかった。ていうか、律儀にあんな約束守んなくていいよ!お兄ちゃん面とか、ウザイって言ってんじゃん。……いらないっ」


優月はカップケーキを半分も食べず、陸を睨みつけドカドカと足音を立て出ていく。




陸は、その場に立ち尽くしていた。


優月がまさかそこまで怒るとは思っていなかったのだ。

この前の髪を触ろうとした件の、詫びの気持ちもあった。


これでは振り出しに戻っただけだ。




自分とどんどん距離が離れていく優月。

ただただ、陸は寂しさが募っていった。



そして、複雑に乱れる感情が自分の中で渦巻くのも感じた。




優月の考えていることが、陸は分からなくなった。

何をしたら喜ぶのか、何で怒るのか…。









二人の中で何かが変わろうとしている、そんな予感がしていた。