「私、初めて屋上来た…」
同じように優月も彼の隣で寝転ぶ。
5時間目の授業開始を告げるチャイムが遠くで響く。
少し風が肌寒いが、雲も少ないたっぷりの日差しは、今の彼女には、充分な目に見えないひざ掛けのようだった。
「私ね、両親亡くなってるの。今年の春に…」
瞳を閉じながら長澤は彼女の話を聞いた。
そして優月は家の事情を打ち明ける。
いとこと祖父母と暮らしていることを…。
「…じゃあ、噂の写真は本当にデマなんだね」
「うん。両親は生活態度とかわりと厳しい人でね、箸の持ち方とか掃除も。それが当然になってた。今はいとこがガミガミうるさいんだけどね。ピアスだって、生きてたら絶対反対したと思う。いないからって好き勝手していいことにならないしね。おじいちゃん達にも悲しい思いさせたくないし。だから、どうしても開けたくなかった…」
話しているうちに、ずっと虚勢を張っていた力が抜け、涙腺まで崩壊していく。