「光君!」


解放された優月は、せき込みながら必死で呼吸する。

そんな彼女に肩を貸し、長澤は2年女子達ににっこりと笑顔を向ける。



「もうやめてくれませんか。えーっとこういうことする人ってクズって言うんですよね。……俺大ッ嫌いです。こっちも色んな考えあるんで、やめないなら…それなりに覚悟していおいてください。ふふ」


不気味なまでに終始笑顔を絶やさず、そうハキハキ宣告すると、ひょいと軽々優月を横抱きにして去った。

爽やかさは消さずに、恐ろしいこと言ってのける彼は、本当に死神王子かもしれない。




まだ苦しい呼吸をしながら、優月が去り際に見た彼女達は、すっかり小さくなっていて、拍子抜けするほど滑稽だった。






長澤が横抱きのまま連れてきたのは、屋上だった。


さすがやんちゃ軍団だけあって、鍵が閉まっていてもお手のもの。

まるで自分の家のように、慣れた手つきで、常備しているのか木の枝であっという間に開ける。

『ただいま』という声が聞こえてきそうなほど。



「あー、今日天気よくてよかったー」

長澤はハンバーガーがすっぽり入りそうなほど大きいあくびをすると、大の字に寝転んだ。