噂話を頻繁に持ち出すなんて、どうせどっちを選んでもいずれは噂を流すことは決まっている。

そう優月は確信していた。


「…え、選んだんで、早く終わりにしませんか?授業始まるんで」


「は?何開き直ってんの?しかも良い子ぶっちゃって。超かわいくないんだけど。…もういいや、やっちゃおう」



リーダー各である黒髪女子がそう言うと、それが合図だったらしく、他の女子達が一斉に優月を押さえ込む。


「な、何するんですかっ、離し」


「うっせーな、黙れ!」


巻いた髪の容姿とまるで似つかない言葉を吐く彼女は、優月の口を手で塞ぐ。


かなり強めに塞がれ、呼吸困難になった優月は、その場に崩れるように倒れこむ。

のしかかる女子達に身動きが取れなくなり、もう限界寸前。



うっすら開けた瞼から見えたのは、黒髪の女子が持つ安全ピン。


「大人しくしてなよ。あっという間に終わるから」


「おしゃれになるんだから別に嫌がることないじゃん」


「せっかくだから、1個じゃないほうが、いいよね」



口元だけ笑う彼女達。

何をされるか瞬時に察した彼女は、最後の力を振り絞りもがいて抵抗する。


「うう、うー!」



優月の耳にピンがあと数センチと迫ったところ、大柄な男子生徒が飛び込んできて彼女らから優月を引き剥がす。