「たまにはさ、選択肢あげるよ。可哀想だし。……ピアス開けるか、パクるか」
ストレートヘアの黒髪で、僅かな化粧しかしてない彼女は、一見すると、清純そうに見える。
まさか裏でこんなことをしているなんて、誰も想像もつかないような。
「分かるよね、どっちも拒否ればあの噂、流すよ?」
黒髪の子に続けてそう言う彼女は、巻いた髪を指でいじりながら、値踏みするように優月をじろりと見る。
「………」
恐怖ゆえに、自分が今ちゃんと呼吸しているかさえ分からなくなる優月。
「悩むことないでしょー、万引きは犯罪だよ?」
完全に優月の弱みを握っている。
他の女子達もクスクス笑う。
一刻も早くこの場を去りたい優月がとっさに口に出した言葉は…
「何を盗めばいいんですか?」
「…あっははははは!この子万引きしようとしてるよ!やばくねー?」
「バッカだねー、犯罪者だよ?いいの?バレればあっちの噂も出ちゃうかもねー、そんで退学決定。はははは」
笑い転げる彼女達の中、優月は地下室の廊下の薄暗い壁に背をつけ、この時が終わるのをじっと待つ。