「今来たとこだけど。で、それ学校で?」


そう聞きながら、陸は麦茶を冷蔵庫から取り出しコップに注ぐ。


「うん。調理実習でちょっとね。やっちゃったよね…、あは」


「どうせぼーっとこいてたんだろ。料理の時は気抜くなって散々注意したろ。特に包丁は」


「うるさいなー、しょうがないじゃん。陸とは違うんだからさぁ」


ぷいっと陸から顔を逸らす。



ぼーっとしていたことは事実でも、本当は陸と噂になったことがそのぼーっとしていた原因なんて、口が裂けても言えない。



「ちょっと見せてみ」


優月の左手首を掴み、陸は切った指をまじまじと見つめる。

真剣に見る姿と掴かむ手の強さにドキドキ脈打ち、ついでに傷口にまで同じリズムで痛みが広がる。


「結構痛いだろ?いいもんやるよ。ちょっと待ってろ」


そう言って、救急箱を取りにいき絆創膏を一枚出す。