指の痛みさえ忘れさせ、体を高揚させる力がある。



彼のぎこちなく伝わってくる、優しくもどこか切ない温もりに、彼女は冷たく突き放すことなどできなかった。


彼の顔も見れず、自分の顔も見られたくはなく…。


抱き合っていれば、丁度顔も見られずに済むなんて、皮肉にも都合がいい。





この時の互いの呼吸音と心音は、言葉の代弁者だった。








廊下の足音に気づき、パッと体を離し、つんのめりそうになりながらも、保健室から勢いよく飛び出したのは優月だった。


置かれている状況を自覚したのと、真っ赤にゆで上がった顔を彼に見られないために。




自分で頬に触れ、酷いほてりに驚く。




(何であんなことっ…、どうかしてる私)