予想もしない長澤の言葉に思考カ回路が止まり、今置かれている状況さえあやふやにする。
ここは保健室だ。
誰もいない保健室で、抱き合っているというそんな状況を誰かに見られでもしたら、噂の件で学校側で要注意人物にされている彼女を、さらに悪評へ導くことになる。
けれど、今の二人はそんなことも忘れていた。
長澤の少し速い息遣いが、優月の耳に直接触れ、手を回された背中は敏感になる。
容赦なく彼女の鼓動はどんどん高鳴った。
動揺と困惑が入り混じって、キャパを超えるほどに彼女の中を熱が巡り、麻痺したように体はぴくりとも動けなかった。
言葉がすっぽり抜け落ち、呆然と抱きしめられている中で、胸がうずくような熱い痛みを、ふと優月は感じた。
それは陸に対して感じる胸の痛みと、少しだけ似ていた。