里乃は言いかけた言葉を飲み込み、二人の背中を見送った。
「付き合ってるって、本当かもね…」
「長澤君、佐野さんの前だと、表情全然違うもんね」
二人が出て行った後、クラスメイト達の中からそんな声が聞こえた。
「長澤、ありがとう」
「いーえ」
先生が留守だった保健室で、彼女に器用に消毒と絆創膏の手当てをした長澤。
幼い頃からやんちゃだっただけあって、わりとこういうことは慣れているらしい。
(何してんだろう、本当に…)
ぼーっとしていたことを、改めて実感し、反省する優月。
地味に痛む傷は、自分への戒めのようにジンジン全身に響く。
「本当にそそかっしいよな、佐野」
「今日は、さすがに不注意だった」
「いつもだろー、でも最近は心ここにあらずって顔してる」