走ってきた長澤は、下駄箱で優月に追いつくと、息を切らしながら話す。


「……話しかけようか、本当は、今日は迷ってた。周りの空気異常だったし。けど、あんなのおかしいだろ。俺は噂に流されねー。佐野が嫌がったって、これまで通り話しかけるし。デレてくれるの楽しみにしてるし?」


「……」


「俺は別に気にしねーよ。自分がどんな目で見られようが。バカバカしいじゃん。何が正しいか知りもしないで態度変えるとかさ」




優しい。


きっとどこまでも彼は優しい。



彼の周りに人が集まる理由が、優月は本当に分かった気がした。



少しでも女好きなんて煙たがっていたことを、心底反省した。






帰り道、だんまりでいた彼女の隣で長澤は一人、どうでもいい話を別れるまで延々と話した。


昨日見た、不思議の国のアリスの国に行った夢の話から、腕から生えた超長い白い毛を一生懸命大事にしていることなど……。